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By ShureJapan |  Comment(s)

ワイヤレス完全理解マニュアル:Vol.2 電波伝搬

ヘイデン・ライパーによりLiveTheater内に投稿(2018年2月21日)

『ワイヤレス完全理解マニュアル』の第2回へようこそ。今回は電磁波伝搬に注目し、波長、反射、回折、吸収、および偏波の概念について説明します。

音波とは異なり、電磁波は伝搬時に空気などの物理媒体を必要としません。実際、電磁波は真空空間で最も伝搬効率が高くなります。空間における伝搬速度は光の速さ(3 x 10の8乗 m/s)です。この速度値は、ワイヤレスマイクロホンやパーソナルモニターのエンジニアリング用途において、特定の周波数における波長を導き出すときに使えるため、覚えておくことが大切です。

電波方程式

波長は速度を周波数で割った値であるとする電波方程式によると、500 MHzでの1波長は0.6 mです。同様に、600 MHzの1波長は0.5 mに相当します。お気づきと思いますが、周波数が高くなるほど波長は短くなります。これは、伝搬経路上の障害物の影響を考慮するときに非常に重要です。


送信アンテナから放射された電磁波は、伝搬途中の物理的環境に影響されます。音波と同様に、電磁波も自由空間の伝搬損失の影響を受け、その割合は逆二乗の法則によって決まります。逆二乗の法則とは、完全な無指向性の点音源の場合、音源からの距離が2倍になると、信号電力は1/4に減衰するという法則です。これは、「見通し」が確保された理想的な状態において送信機の運用距離を制限する主な要因です。


また、電磁波は伝搬経路上の障害物の大きさや成分にも影響されることがあります。金属障害物の大きさが信号の波長より長いと反射が発生するため、金属障害物に対しては特に敏感で、反射角は入射角に等しく、反射波の位相は180°ずれます。

電磁波の障害物となるもの

反射性を持つ障害物は通常、背後にRFの陰が生じ、カバー範囲内に「デッドゾーン」ができることがあります。面白いことに、穴が多い反射性の金属物で、その穴の寸法が信号の波長より小さい場合、その表面は固体と同様に働きます。そのため、網、格子、鉄格子などの配列構造の金属物は、たとえそれ自体を通して見通しが確保されていても、電磁波を反射する可能性があります。

逆に、穴の寸法が信号の波長より大きい場合、電磁波は影響を受けることなく通過します。これが使用する周波数の波長の把握が重要である主な理由です。この知識はRF環境の評価、信号が反射する可能性があるポイントの特定、目的のカバー範囲内に発生する「デッドゾーン」の最小化に役立ちます。

非金属物は電磁波を反射しませんが、電磁波が通過する際にエネルギーの一部を吸収する傾向があります。信号の減衰量は、信号の波長のほか、障害物の厚さや材料成分にもよりますが、高密度の物質の方がエネルギー吸収量が多く、高い周波数の方が信号の吸収量が多い傾向があります。反射性の金属物と同様に、非常に高密度の吸収物質は信号を大きく減衰させ、その結果、その障害物の向こう側のエリアに受信信号の品質を低下させるRFの陰が生じる可能性があります。

例えば、主に塩水でできている人間の体は、RFエネルギーの効果的な吸収体です。送信アンテナと受信アンテナの間に人間がいると、RF信号が吸収されるため、RF性能が低下することがあります。

このグラフは、ボディーパック型送信機によって送信された2つの周波数について、人間の体を中心とする360°の範囲内でのRF信号強度の差を示したものです。100°~260°では、この方向に伝搬する信号は人間の体を通過しないため、送信信号の強度はほぼ一定です。しかし、260°~100°では人体の影響のため、かなりばらついています。一般に、人体による信号の吸収によって約6dBの減衰が生じます。

また、このテストでは355°と40°の近くにヌルポイントがあります。実際、これらのヌルポイントのビーム幅と総減衰量は、人によっても、ボディーパック型送信機の装着位置によっても異なります。興味深いことに、太った人ほど多くのRFエネルギーを吸収します。

したがって、任意の位置に届く電磁波の強度は、元の信号源からの送信強度から、伝搬距離と環境の影響によって生じる総減衰量を差し引いた値となります。伝搬損失は送信機の動きに応じて大きく変化するため、信号のダイナミックレンジは50 dB程度になることもあります。したがって、受信アンテナによって検波される信号の強度をなるべく高く確保することが非常に重要です。そのため、電磁波の偏波を考慮することも大切です。

電磁波の偏波

偏波とは電磁波の電場の向きのことです。送信アンテナエレメントを地面に対して垂直に設置した場合、電磁波は垂直偏波されます。地面に対して平行に設置した場合は水平偏波となります。受信信号は、送信アンテナと受信アンテナの偏波が一致している場合に最も強くなります。

実際、送信アンテナと受信アンテナの偏波が直交する、つまり90°ずれている場合、受信アンテナに誘導される電圧は20 dBも減衰することがあります。伝搬損失とは別にこの偏波損失があり、アンテナの偏波不整合は簡単に回避できるということを考えると、送信アンテナと受信アンテナの物理的な方向を合わせることの重要性は明らかです。アンテナの設置に関するベストプラクティスについては、次回以降で取り上げます。

次回は、ワイヤレスマイクロホンやパーソナルモニター用途で最も一般的に使用される各種アンテナの設計上および性能上の特徴について考えます。

ヘイデン・ライパー
プロフェッショナルオーディオ業界で15年の経験を持つ電気音響エンジニア。Shure UKでアプリケーションエンジニア、シルク・ドゥ・ソレイユでシニアオーディオ/ビデオ/通信エンジニア、さらに契約エンジニアとしてAVデザイン&コミッショニングエンジニアおよびRFエンジニアを歴任し、現在はShure Asia Limitedに技術コンサルタントとして勤務しています。

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