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ワイヤレス完全理解マニュアル:Vol.3 アンテナのタイプと特性

ヘイデン・ライパーによりTheaterWireless Systemsに投稿(2018年3月14日)


『ワイヤレス完全理解マニュアル』の第3回へようこそ。今回はアンテナを取り上げ、プロオーディオ業界で最も一般的に使用されるアンテナの設計と特性について説明します。アンテナは、送信機から出力された交流電圧と関連した電流を電磁波に変換するトランスデューサーです。パッシブアンテナは相反デバイスです。つまり、送信トランスデューサーとしても、受信トランスデューサーとしても機能します。

受信アンテナでは、電磁波がアンテナエレメントを通過するとアンテナ端子に交流電流と関連した電圧が誘導されます。ワイヤレスマイクロホン受信機やパーソナルモニター受信機によって検出される信号の電力は比較的低いため、特定用途に対して変換を最適化し、電波伝搬中に発生する大きな損失をある程度補償するような形でエレメントを配置した、さまざまなアンテナ設計が存在します。

サイズと重量も設計上の重要な考慮事項です。プロオーディオ業界で最も一般的に使用されるアンテナのタイプは、モノポール、ダイポール、ログペリオディック、そしてヘリカルです。

モノポールアンテナ

モノポールは、1本の1/4波長エレメントで構成される不平衡アンテナです。グランドプレーン(通常はアンテナが接続されている受信機シャーシまたはPC基板)からの反射を、実質上もう1つの1/4波長エレメントとして使用します。反射像は物理エレメントと同相であるため、2つを合成すると1/2波長として機能します。モノポールアンテナは、多くの場合、ボディーパック型送信機やエントリーレベルの受信機に搭載されます。モノポールの指向性はグランドプレーンでは無指向性ですが、物理エレメントの先端はヌルポイントとなります。

Shure UA700-V VHF モノポールアンテナ

ダイポールアンテナ

ダイポールアンテナは、それぞれ1/4波長の2本の物理エレメントで構成されます。指向性はモノポールと同じですが、グランドプレーンからの反射を一方のエレメントとして機能させるのではなく、2本の1/4波長エレメントを使用するため、構成によってはモノポールを理論上最大3dB上回るゲインが得られます。

アンテナ設計にもよりますが、ダイポールの場合も十分な性能を得るためにグランドプレーンが必要になることがあります。その場合、グランドプレーンがないと指向性が非対称になり、入力インピーダンスの変化によって伝送ラインに定在波が発生することがあります。

ダイポールアンテナは、アンテナエレメントの直径を大きくするか、円筒線ではなくコニカルエレメントを使用することにより、動作帯域幅を広げることができます。また、ダイポールから1/16波長~1/4波長の位置に配置した反射器を使用して、特定方向のゲインを上げることも可能です。

Shure UA860VグランドリファレンスVHFダイポールアンテナ

ログペリオディックアンテナ

ログペリオディックアンテナは、長さと間隔が異なるダイポールのアレイで構成されます。帯域幅は、アレイ内の最も短いダイポールと最も長いダイポールが1/2波長となる周波数によって決まります。エレメントの長さと間隔を対数周期的に変化させることにより、特定の周波数で1本または複数のダイポールがアクティブになると、他のエレメントがアクティブエレメントとの相対的なサイズおよび位置関係に応じて反射器または導波器として働きます。アンテナが長くなるほど、またエレメント数が多くなるほど帯域幅が広くなり、ビーム幅は狭くなります。通常、ログペリオディックアンテナの前方ゲインは6~8 dBで、ビーム幅は約120°です。

Shure UA874WBアクティブ指向性ログペリオディックアンテナ – 5本の調整されたダイポールアレイ

円偏波アンテナ

円偏波用に設計されたアンテナもあります。電磁波は、垂直面と水平面に等しい電場が90°位相がずれて存在するときに円偏波するとされています。この2つの電場は、伝搬方向に沿ってアンテナ設計によって右回りまたは左回りに回転し、キャリア周波数の波長ごとに360°回転します。

円偏波の電磁波は、垂直偏波受信アンテナでも、水平偏波受信アンテナでも同様に検波可能です。そのため、円偏波アンテナは海外ではパーソナルモニター用途において一般的な選択肢となります。これは、固定偏波送信アンテナと、その偏波がボディーパックの動きと共に変化するパーソナルモニター受信アンテナ間の偏波不整合の角度変化に起因する最大20 dBの信号減衰の発生リスクがなくなるからです。

Professional Wireless HA-8089ヘリカルアンテナ

ヘリカルは、円偏波用に設計された最も一般的なアンテナです。ヘリカルアンテナの励振エレメントは通常、らせん状に巻かれ、グランドプレーンの上に配置されたワイヤーまたはリボンで構成されます。帯域幅が広く、最大12 dBの前方ゲインが得られますが、ビーム幅は約60°と非常に狭いのが特徴です。

モノポール、ダイポール、ログペリオディック、およびヘリカルアンテナは、プロオーディオ業界で最も一般的なタイプですが、そのほかにも数多くの設計があり、状況によってはワイヤレスマイクロホンやパーソナルモニター用途に非常に適したものもあります。

そうしたものの一例としてパッチアンテナが挙げられます。パッチアンテナの主な利点は、非常に薄型で天井や壁に設置できることです。通常は1/2波長マイクロストリップで構成され、グランドプレーンの上の基板上に取り付けられます。パッチアンテナは通常、低ゲインと狭帯域幅を特徴としますが、広帯域モデルも作られています。

パッチアンテナはさまざまな設計が存在し、携帯電話などに広く使用されており、品質や偏波もさまざまです。プロオーディオ用途では、DECT帯や2.4 GHz帯で動作するワイヤレス・マイクロホン・システムによく使用されます。


以上、プロオーディオ業界で一般的に見られる主なアンテナ設計について説明しました。ただし、各設計に無数のバリエーションがあることに加え、ここでは取り上げなかったものも数多く存在します。例えば、ログペリオディック・アンテナはすべて、先に説明した基本設計原理に基づいていますが、各メーカーのモデルを見ると若干異なっているようです。

重要なことは、特定の用途ごとにモデルの選択や使用に関する決定を十分な情報に基づいて行えるように、各アンテナタイプの一般的特徴を理解しておくことです。

ヘイデン・ライパー
プロフェッショナルオーディオ業界で15年の経験を持つ電気音響エンジニア。Shure UKでアプリケーションエンジニア、シルク・ドゥ・ソレイユでシニアオーディオ/ビデオ/通信エンジニア、さらに契約エンジニアとしてAVデザイン&コミッショニングエンジニアおよびRFエンジニアを歴任し、現在はShure Asia Limitedに技術コンサルタントとして勤務しています。

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