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ワイヤレス完全理解マニュアル:Vol.5 RFシステムの接続

 

『ワイヤレス完全理解マニュアル』の第5回へようこそ。今回はRFシステムの接続を取り上げ、特にワイヤレスマイクロホンのアンテナ信号の分配と混合、パーソナルモニター送信機の混合に関して推奨されるベストプラクティスについて説明します。

アンテナの分配

受信アンテナ信号の適切な分配を怠ることは、マルチチャンネルワイヤレスシステムのセットアップの際に犯しがちなミスです。しかし、「アンテナファーム」構成は、残念ながら実際の現場でよく見受けられます。あまり知られていないようですが、アンテナ同士を近接配置すると相互作用が生じる可能性があります。この相互作用は、各アンテナの極性感度の歪み、受信機のフロントエンドステージの過負荷、受信機間での局部発振周波数の干渉の原因となります。

「アンテナファーム」は絶対に避けること

これらの問題を回避するため、Shureでは3チャンネル以上のシステムにはアンテナ分配器を使用することを推奨しています。受信アンテナの分配方法には、大きく分けてパッシブスプリッター、受信機のRFカスケード、およびアンテナ分配システムの3つがあります。

パッシブスプリッターによるアンテナ分配は、かなりコストを抑えながら簡単に導入できる方法です。Shure UA221は、RFインピーダンス整合によって分岐損失を3 dBに抑えるシンプルなインラインスプリッターです。ただし、1系統を複数のパッシブスプリッターで分配すると、分岐損失がその分増えるため実用的でなく、この方法は2台の受信機にRF信号を供給する場合にしか向いていません。

多くのミッドレンジ~ハイエンドのワイヤレスマイク受信機は、ユニット間でRF信号をデイジーチェーン接続する場合に使用するRFカスケードポートを備えています。これは、この機能を備えた受信機を使用する場合に、費用対効果に優れた信号分配方法となります。

 

カスケードポートの使用

カスケードポートは、受信機のモデルによってパッシブの場合とアクティブの場合があります。そのため、1つのカスケードチェーンで接続可能な受信機数について、メーカーによって指定された最大限度を知っておくことが重要です。パッシブカスケードポートは1カスケードアウト当たり3 dBの分岐損失が生じますが、アクティブポートの出力はユニティゲインです。カスケードポートは推奨最大限度を超えても動作しますが、RF信号のノイズフロアがカスケードアウトごとにわずかに上昇することに加え、パッシブ分岐損失の複合作用を考えると、メーカーのガイドラインに従わないと信号が不安定になる可能性があります。また、カスケードポートはバンドが制限されていることもあります。その場合、チェーン内のすべての受信機を同じ周波数バンドで運用しなければなりません。

 

RFカスケード

この方法の重大なリスクは、ある受信機への電源またはアンテナ接続が切断された場合、それ以降のすべての受信機の信号が失われることです。そのため、ShureではRFカスケード接続をあまり推奨していません。必要な場合に備えてカスケードポートを搭載していますが、アンテナ分配システムの方がRF信号の整合性が良好に維持されます。

アンテナ分配システムは、パッシブスプリッターによる3 dBの損失とRFカスケードによるS/N比の段階的な低下を回避するために、アンテナ信号を複数の受信機に直接接続する場合に使用します。Shureが製造するアクティブアンテナ分配システムには、UA844+SWBとUA845UWBの2つがあり、どちらもRF信号を5台のダイバーシティ受信機に分配することが可能です。

大規模なシステムでは、ある分配システムの出力を次のレベルの分配システムの入力に送り、それらの分配システムからそれぞれ複数の受信機に信号を供給することができます。RF歪みや干渉が増加する可能性があることから、Shureでは通常3レベルの分配は推奨していません。

実際のところ、分配システムとRFカスケードの組み合わせを検討することが可能で、かなり大規模なプロジェクトでも通常は2レベルの分配で十分です。例えば、大規模なAXT Digitalシステムを構築する場合、1台のマスターUA845UWBから、5台の2レベル目のUA845UWB分配システムにRF信号を分配し、それらから25台の4チャンネル受信機にRF信号を分配することが可能です。さらに、各AXT Digital 4チャンネル受信機から次の4チャンネル受信機にRFカスケードできるため、1対の受信アンテナで200チャンネルのAXT Digitalへの対応が可能です。

チャンネル数の多いシステムでは、複数レベルのアンテナ分配を用いることが可能

 

ワイヤレスマイクロホンシステムの運用距離を拡大するために複数の受信アンテナを設置する場合、パッシブ混合器で混合すれば1つのRF入力として受信機またはアンテナ分配システムに接続することが可能です。Shure UA221のほか、PA421BおよびPA821Bパーソナルモニターシステム用アンテナ混合器もパッシブ混合モードに設定(SHUREサービス技術者による対応が必要)すれば、アンテナ受信用の混合器として使用できます。チャンネル数以外の主な違いはアンテナ入力間のアイソレーションレベルで、UA221の約15 dBに対し、PA421BおよびPA821Bは約60 dBのアイソレーションが可能です。

物理的に隔離されたスペース(コンベンションセンター内の複数の部屋など)にアンテナを設置する場合、混合器入力のアイソレーションは特に重要ではありません。それに対し、同じ物理スペースに設置された複数のアンテナを混合する場合、PA421BおよびPA821Bの大きな入力アイソレーションが非常に重要になります。

複数の受信アンテナを混合した場合、それらが電気的に相互作用するとアレイを形成し、あたかも1本のアンテナであるかのように機能します。物理的に隔離されている場合、通常は複数のスペース間で運用距離が拡大し、各アンテナの極性感度はほとんど変化しません。しかし、複数の受信アンテナが同じスペースに設置されている場合のように物理的に隔離されていない場合、電気的相互作用により各アンテナの特定の極性感度が若干変化する可能性があります。この場当たり的に形成されるアレイの極性感度は予測が難しく、スペースのカバレージがエンジニアが期待するほど均一にならないことがあります。

混合器の入力アイソレーションが大きいほど、複数のアンテナがアレイを形成するのを防止し、さもなければ良好なカバレージが期待されるはずのエリアにおいて、各アンテナの極性感度が変化して偶然にデッドゾーンが生じるリスクを最小限に抑えるのに役立ちます。Shureでは、同じ物理スペースに設置された受信アンテナを混合する場合はUA221ではなく、入力アイソレーションが非常に大きいPA421BまたはPA821Bを使用することを推奨しています。

物理的に隔離されている場合に受信アンテナ信号をShure UA221で混合すること

 

インラインRFブースターを使用する場合、受信アンテナシステムを構築する際に総消費電流を意識することも重要です。受信機または分配システムのアンテナ入力は最大定格消費電流が規定されており、多くの場合、1台または2台のRFブースターにしか電源を十分に供給できません。複数のブースターの使用によりこの定格消費電流を超える場合、それより大きい電流容量を持つバイアス・ティーが必要になることがあります。

パーソナルモニターアプリケーションでも、「アンテナファーム」の状態を避けることが同様に重要です。受信アンテナの場合と同様に、複数の送信アンテナを近接配置すると相互作用して各アンテナの極性放射パターンが歪み、高レベルの相互変調積が生じます。そのため、Shureでは3チャンネル以上のパーソナルモニターシステムには相互変調積の電力レベルを抑制し、信号のノイズフロアを最低限に抑えるように設計されたパーソナルモニターシステム用アクティブ混合器を使用することを推奨しています。パーソナルモニターシステムにはパッシブ混合器は推奨されません。

また、パーソナルモニターシステム用アクティブ混合器は最大定格入力電力が規定されています。Shure PA411の場合は30 mWですが、PA421BおよびPA821Bは入力ごとに100 mWまで対応しています。チャンネル数の多いシステムでは、複数のパーソナルモニターシステム用混合器の出力をマスターアクティブ混合器に混合しないことが非常に重要です。マスターの入力ステージが過負荷になる可能性があります。このため、Shure PA421BおよびPA821Bはパッシブ拡張ポートを備えています。

 

以上が受信アンテナの信号分配と混合、およびパーソナルモニター送信機の混合に関する主なベストプラクティスです。 次回は伝送ラインを取り上げ、同軸ケーブルインピーダンスや、50 ΩがRFシステムの標準である理由を説明します。

 

ヘイデン・ライパーによりTheaterWireless Systemsに投稿(2018年6月12日)

 

ヘイデン・ライパー
プロフェッショナルオーディオ業界で15年の経験を持つ電気音響エンジニア。Shure UKでアプリケーションエンジニア、シルク・ドゥ・ソレイユでシニアオーディオ/ビデオ/通信エンジニア、さらに契約エンジニアとしてAVデザイン&コミッショニングエンジニアおよびRFエンジニアを歴任し、現在はShure Asia Limitedに技術コンサルタントとして勤務しています。

 

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