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ワイヤレス完全理解マニュアル:Vol.4 アンテナの設置に関するベストプラクティス

 

Shureの『ワイヤレス完全理解マニュアル』の第4回へようこそ。今回はアンテナの設置を中心に取り上げます。また、RFシステムのダイナミックレンジについても説明します。これは、今回紹介するアンテナの設置に関する推奨事項がベストプラクティスと考えられている理由を理解するための基礎知識となります。

ほとんどの音響エンジニアは、受信アンテナと送信アンテナの間に明確な見通しをできる限り確保することがベストプラクティスであることを知っていますが、明確な見通しとは実際には何かについて混乱が見られることが時々あります。明確な見通しとは、単にアンテナが見えるということではありません。電磁波は、障害物による干渉を受けることなく送信アンテナから受信アンテナまで伝搬できなければなりません。したがって、ガラス、アクリル樹脂、水などの透明素材も、金網フェンスやケージなどの一見見通しの良い構造と同様に障害物と考える必要があります。

アンテナの位置

位置に関して言えば、受信アンテナはあらゆる反射面から1波長未満の距離に設置すべきではありません。受信アンテナが検出するRF信号は直接波と反射波が複雑に入り交じっており、その特性は送信機の動きと共に絶えず変化します。反射面から1波長未満の距離にアンテナを設置すると、反射によって誘発されるマルチパス位相キャンセルが原因でドロップアウトが発生するリスクが高くなる可能性があります。時には環境的事情によってアンテナの位置が決まり、こうした推奨事項に従うことができないこともあります。そうした場合、通常はアンテナの位置を少し調整するだけでシステムの応答がまったく変わるため、さまざまな位置を試して最も良い結果が得られる位置を見つけることです。

アンテナは、できれば床面から2メートル以上の位置に設置する必要があります。この推奨事項の主な狙いは、人間などの無反射障害物によるRF信号の吸収を防ぐことです。しかし、ラックマウントした受信機に1/2波長アンテナを直接接続した場合は、この推奨事項に従うことは容易ではありません。その場合、送信アンテナと受信アンテナの間に明確な見通しを確保することが特に重要です。

送信アンテナと受信アンテナの物理的距離は概して最小限に抑えるべきですが、送信機に近すぎる位置に受信アンテナを設置することは犯しがちなミスです。10 mWで動作する送信機とパッシブ無指向性受信アンテナで構成されたシステムの場合、受信機の入力ステージが過負荷にならないようにするために、アンテナの間に最低3 mの間隔を保つというのが一般的な目安です。指向性受信アンテナまたはRFアンプを使用する場合や、送信機の出力レベルが10 mWを超える場合は、3 m以上の間隔が必要になることがあります。例えば、UA874アクティブ指向性受信アンテナと10 mWで動作するUHF-R送信機を使用し、UA874の内蔵RFアンプを+12 dBに設定した場合、15 mもの間隔が必要になります。これは重要なポイントですので覚えておいてください。極端な場合、受信機のフロントエンドの過負荷がドロップアウトの原因となるからです。

受信機での信号強度は、受信アンテナの偏波とマイクロホンによって送信された電磁波が一致した場合に最も大きくなります。偏波が整合しない場合、受信機での信号強度は減衰し、その量はオフセット角によって決まります。オフセットが90°の場合が最悪で、理論上は最大20 dBの減衰が生じます。

移動する送信機と垂直受信アンテナの偏波不整合に起因する損失( フルサイズで表示

 

偏波損失に加えて、第2回で説明した環境損失および伝搬損失もあります。これらの損失の累積的効果はよく「フェージング」と呼ばれます。

ワイヤレス・マイクロホン・システムにおけるフェージングは簡単に測定できます。下のプロットはShure Wireless Workbenchで記録したもので、9 m x 8 mの部屋でULX-Dシステムを使用し、受信アンテナA/Bの両方を垂直に設置した状態で行った屋内ウォークテスト中に発生したフェージングを示しています。

ULX-D屋内ウォークテストのRFヒストリープロット – 受信アンテナを垂直に設置した場合 (フルサイズで表示

 

結果は、ハンドヘルドで約40 dB、ラベリアで約50 dBのRFダイナミックレンジです。正確な仕様はシステムによって異なるものの、どのRFシステムにも動作のために最低限必要なS/N比があることを考えると、フェージングが信号安定性にたちまち影響を与える可能性があることはすぐにわかります。

使用中のワイヤレスマイクロホンの物理的な方向はまったく予測できないため、Shureでは受信アンテナA/BをV字形に設置することを推奨しています。移動送信機を使用する場合、2本の受信アンテナをそれぞれ315°と45°に設置して2本のアンテナ間の角度を90°にするとまずまずの結果が得られます。受信アンテナをこのように設置した場合、伝搬損失を無視すれば、理論上の最大偏波損失を3 dB程度に抑えられます。

移動送信機とV字構成で設置した受信機アンテナの偏波不整合によって生じる損失 (フルサイズで表示

 

送信アンテナと受信アンテナの偏波のオフセット角が45°を超えることがないため、損失は最小限に抑えられます。アンテナA/BをこのV字構成で設置した状態で同じULX-D屋内ウォークテストを行ったところ、下の結果が得られました。

ULX-D屋内ウォークテストのRFヒストリープロット – 受信アンテナをV字構成で設置した場合
フルサイズで表示

 

この場合、RFダイナミックレンジ測定値はハンドヘルドで約30 dB、ラベリアで約40 dBとなりました。このテストは環境損失と伝搬損失を含んでいることを忘れないでください。受信アンテナA/Bの角度を調整するだけで、このシステムのフェージングは10 dB抑制されました。この差は大きく、時としてショーを問題なくこなせるか、一見不規則なドロップアウトに悩まされるかの違いとなって現れることもあります。

アンテナの間隔

もう1つのよくある混乱ポイントは、受信アンテナA/Bの最小間隔に関することです。十分なダイバーシティ性能を得るには、アンテナA/Bを1/4波長未満の間隔で設置してはならず、1/2波長から1波長離して設置するのが理想です。ダイバーシティシステムは、受信アンテナが同じRF反射場内に存在するほど設置間隔が近く、かつ一方のアンテナで発生したマルチパスドロップアウト状態がもう一方のアンテナで同時に発生することがないように設置間隔が離れている場合に最も効果を発揮します。

受信アンテナを1/4波長未満の間隔で設置した場合、両方のアンテナでマルチパスドロップアウト状態が同時に発生する可能性が高くなります。逆に、1波長を大きく超える間隔で設置した場合、2本のアンテナが別のRF反射場に存在する可能性が高くなります。この場合、マルチパスドロップアウト状態が両方の受信アンテナで同時に発生する可能性は必ずしも高くなりませんが、不規則になります。実際、広いスペースで最大限の運用距離を確保するために、1波長をはるかに超える間隔でダイバーシティ受信アンテナを設置することはよくあります。このアプローチは確かに効果的ですが、もはや本当の意味でのダイバーシティシステムではないことを理解していることが重要です。環境や構成にもよりますが、このアプローチでは運用距離は長くなるものの、概して非ダイバーシティシステムのような性能しか得られません。

以上がアンテナの設置に関する主なベストプラクティスです。環境に応じたアンテナモデルの選択に関する考慮事項もありますが、次回以降で取り上げます。RFシステムの接続性に注目し、信号の分配、合成、および増幅に関するベストプラクティスをいくつか紹介します。

 

ヘイデン・ライパーによりTheaterWireless Systemsに投稿(2018年4月20日)

 

ヘイデン・ライパー
プロフェッショナルオーディオ業界で15年の経験を持つ電気音響エンジニア。Shure UKでアプリケーションエンジニア、シルク・ドゥ・ソレイユでシニアオーディオ/ビデオ/通信エンジニア、さらに契約エンジニアとしてAVデザイン&コミッショニングエンジニアおよびRFエンジニアを歴任し、現在はShure Asia Limitedに技術コンサルタントとして勤務しています。

 

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